ぶどう石  prehnite  Ca2Al(AlSi3O10)(OH)2  [戻る

斜方晶系 二軸性(+)2Vz=60〜70° α=1.611〜1.632 β=1.615〜1.642 γ=1.632〜1.665 γ-α=0.022〜0.035

色・多色性:無色。多色性なし。

形態:基本的には大小さまざまの板柱状で,それが亜平行〜放射状に集合する場合が多い。火成岩の斜長石を交代するものは濁ったような微粒集合体。

消光角:結晶の伸び方向や,へき開に対し直消光。

伸長:負

へき開:1方向(板状の面)に明瞭。

双晶:偏光顕微鏡では認めらない。

累帯構造:時にAl⇔Fe3+やCa⇔Srの部分的な置換があるが偏光顕微鏡では累帯構造は認められない。


産状

深成岩中のCaに富む斜長石の変質鉱物として,緑泥石・斜灰れん石〜緑簾石・アクチノ閃石などと共に微粒集合体をなす(変質斜長石中の塵状の微細な包有物となっている場合も多い)。特に付加体の変はんれい岩には,このような斜長石の仮像以外に,岩石全体を貫く細脈をなすことも多い。

変成岩では,苦鉄質岩起源の低温の変成岩(塊状緻密な緑色岩)にパンペリー石などと共に微粒集合体で存在するが,通常の緑色片岩相以上の変成度の変成岩にはほとんど産しない。一方,蛇紋岩中の塊状のロジン岩の主要構成鉱物として斜灰れん石・加水グロッシュラー・ペクトライトなどと共生して多産し,板状結晶の扇状集合体などをなす場合も多い。また,それと一緒に産する塊状のひすい輝石岩中のひすい輝石を交代する変質鉱物(ロジン岩化による変質物)として,透輝石・ペクトライト・緑泥石・ハイドログロッシュラーなどと共に自形や他形で豊富に見られる。




自家変質した花こう岩中のぶどう石  
Prh:ぶどう石,Pl:斜長石,Af:アルカリ長石,Qz:石英

深成岩は地下深部で数%の水分を含むマグマが徐冷して固まってできる際,それ自身のマグマから分離した水分などで幾分,変質する傾向があり,それを自家変質作用という。その自家変質作用では,斜長石はCaが溶け出し,内部に微細なぶどう石や斜灰れん石などができ,濁ったようになる。それとともにアルカリ長石も濁ったようにセリサイト化し,有色鉱物は緑泥石化・アクチノ閃石化・緑れん石化する傾向がある。画像のようにぶどう石は斜長石を交代するほか,岩石全体を貫く細脈状をなす。なお,自家変質作用では石英は新鮮なままで,平行ニコルで無色透明である。




ロジン岩中のぶどう石  Prh:ぶどう石,Cz:斜灰れん石

粗い板状結晶が扇状に配列し,その間に,細かいぶどう石と斜灰れん石などが微粒集合体をなす。蛇紋岩中のロジン岩塊がこのようなCaに富む鉱物集合体になるのは,蛇紋岩化する前のかんらん岩中のCa(かんらん石中の微量のCaや輝石中のCaなど)が,蛇紋岩化の際に変成流体に溶け出し,それが蛇紋岩メランジェのはんれい岩塊などに作用し,それがCaに富む鉱物集合体(ロジン岩)に変わるためである。
※かんらん岩後の蛇紋岩(蛇紋石)にはCaはほとんど含まれないので変成流体中のCa濃度は非常に高くなる。なお,蛇紋岩地域では,ロジン岩生成以外に,蛇紋岩の割れ目に霰石(CaCO3)が多産するのもそのためである。




ひすい輝石岩を交代するぶどう石  Prh:ぶどう石,Jd:ひすい輝石

蛇紋岩中に塊状で産するひすい輝石岩が,ロジン岩化作用により部分的にぶどう石に交代されたもの。ぶどう石はひすい輝石の柱状結晶集合体を交代するほか,その割れ目を充填し,細脈状をなす。ぶどう石もひすい輝石も形態は似るが,平行ニコルではぶどう石は屈折率が低く,クロスニコルではぶどう石は干渉色が高く2次に達する。
ぶどう石化したひすい輝石は肉眼的に透明度が高くなり,蛇紋岩由来のNiを含む緑泥石が鉱染して鮮緑色の宝石質になっている場合も多い。